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【座談会】新規プロダクト「クロンスマートパス」リリースまでの舞台裏その1|立ち上げから検証まで

MICINでは、9月20日に「クロンスマートパス」をリリースしました。
 
これは、患者さんが医療機関を受診する際の受付・会計・薬の受け取りがスマホひとつで完結し、手ぶらで通院が可能な新サービスです。医療機関の導入コストもかからず、双方にとってより快適な体験を作り出そうとしています。
 
クロンスマートパスの詳細は以下よりご確認いただけます
医療機関向け公式サイト : https://pass-clinic.curon.co/
患者向け公式サイト : https://pass.curon.co/
 
MICIN公式noteではこの「クロンスマートパス」誕生の裏側について、関わったメンバーによる座談会の様子をお届けしていきます!
 
第一弾はビジネスモデルの設計や仮説検証などを担ってきたメンバーによるお話です。

酒井 公希 Koki Sakai
オンライン医療事業部 兼 エンジニアリング&デザイン室プラットフォームチーム プロダクトマネージャー
富士ゼロックスでSEや事業企画の経験を積んだ後、ヤフー・DeNA(現MoT)にてサービスグロースに貢献。その後、MICINに入社。Meety公開中  

太田 浩輔 Kosuke Ota 
オンライン医療事業部 ビジネスプロデューサー
金融系事業会社を経て、LINE株式会社にてLINE Payサービスの黎明期から参画し、営業企画、事務企画やBizDev担当としてアライアンスによるサービスグロースに貢献。その後MICINに入社。 クロンスマートパスの事業リードやBizDevチームで外部企業とのアライアンスを担当。   

岡村 和広 Kazuhiro Okamura オンライン医療事業部 ビジネスプロデューサー
株式会社フリークアウトにて位置情報広告ASE、アプリ向け広告LayApp等の複数事業立ち上げを担当。経営企画、社長室、事業統括を経てMICINに入社。 curonお薬サポートの企画・営業の後、BizDevチームで外部企業とのアライアンスを担当。  

中村 耕史 Takafumi Nakamuara
オンライン医療事業部 リサーチャー
制作会社と事業会社を行き来して2018年よりMICINに参加。 観察やインタビューからインサイトを得て探索する業務を担当。

オンライン診療サービス「curon(クロン)」の目指す世界を実現するために対面診療との両立

岡村:「クロンスマートパス」の元となる構想が生まれたのは去年の10月5日でしたね。

太田:さすが岡村さん、日付までよく覚えてますね(笑)。

岡村:ホテル一室を借りて、私や太田さんのいる事業開発チームでガッツリミーティングをしたんですよね。もともと我々はcuronのオンライン診療やお薬サポートなどのサービスを非連続的に成長させるためのアライアンスをしたりしているチームなんですが、現状を見たときに、サービスは伸びてきてはいるものの、まだ課題はあるよねと。

オンライン診療は、慢性疾患などをお持ちの頻繁にクリニックに通われる方にとって特に便利なサービスです。そうするとMICINのサービスを世界を広げていこうと思ったときに、もっと手前のところから患者さんと接点を持っていく必要がある。そもそも診療の基本は、対面診療が維持されていく現実もあるので、対面の領域から患者さんや薬局、医療機関との接点を作っていかないと、curonの思い描いているような大きな世界観は体現しづらい。じゃあどこから我々って入っていけるんだっけ?…というところがまずスタートでした。

太田:オンライン診療はコロナ禍で一気に広まってはきたものの、まだまだ医療の現場の中心は対面診療。「もっとオンライン診療を身近なものにするために」を目指すのであれば、まずクロンプラットフォームが圧倒的なものに成長し、本当の意味で人々の生活に浸透する必要がある。そんな中で僕らの持っているアセットを活かして勝負できる領域ってどこだろう?と考えたところ、患者さんが通院の際に必ず通るのって受付・会計だから、そこに入ることができれば自然と患者さんとの接点をもって広がるんじゃないかと。ここまでバーッと30分くらいで辿り着いたんですよね。

岡村:ホワイトボードに書いては消しを何度も繰り返しながら、「クロンスマートパス」の基本構想のところまでいきましたね。そもそも日本の医療って不便って言われるけど、医療機関は身近にあるし、海外みたいに病院へ行くのに何時間も車走らせてとかではないですよね。不便といっても近くにあるんです。そうなった時に、患者さんが今感じている医療の煩わしさを解消するには、対面診療における課題を解決していくことに対して目を背けることはできない。

当時のホワイトボード

太田:医療機関への口コミって、受付のスタッフの態度とかキャッシュレス会計ができるか否かで簡単に評価が変わりますしね。些細なことかもしれないけど、それによって患者さんって通院すること自体が面倒になったり。なので、そこには我々が価値を出せる余地があるんじゃないかなと思っています。

プロダクトサイドの懐疑的なスタンスを変えた医療機関の反応

酒井:実際に事業として進めることになって、岡村さんと太田さんが前段のマーケットやどこを狙うのかを急ピッチで整備してくださった後、2022年1月から僕と中村さんがメンバーに入ったんです。僕はプロダクトサイドなので、「患者さんの課題が何なのか?」や「本当に解決されるのか」とか、患者側だけでなく医療機関側の課題もどういう形で解決していくのが良いのかを検討して、プロダクトの解像度を上げていくことに注力しました。

中村さんはリサーチを元にしたUXやサービスデザインのプロフェッショナルなので、一緒に医師や医療機関のスタッフの皆さまにヒアリングしながら本質的な課題を深ぼっていきました。

中村:個人的な感覚だと、このサービスが患者さんにとってメリットがあるのは分かったんですが、医療機関に関しては既にキャッシュレス決済を導入しているところもあったので、「本当にニーズがあるのかな」と最初は確信が持てていませんでした。

酒井:そうですね。私も最初は課題の解像度が高くないので「このサービス大丈夫かな」という感じでした。。中村さんと二人でよく話していましたよね(笑)

中村:はい。今だから言いますが太田さん岡村さんすみません、という感じです(笑)。でも、医療機関へのヒアリングを進めていくうちに「いけそうだな」と思うポイントがだんだん見えてきました。これまで検証していた別のサービスだと、実際に使ってもらう担当者さんに使い方を説明すると「こんなの使えないよ」とか「特定の患者さんのためにだけこれをやるのは忙しいので無理です」みたいな反応が返ってくることがほとんどだったんですけど、今回は「このくらいだったらできるかな」と言ってもらえることが多くて。新しいサービスを使っていただく時って操作に慣れていただくことがめちゃくちゃハードルが高いからこそ、「この反応ならいけそうだな」と思えた瞬間でした。とはいえ、2月くらいまでは割と混沌としてましたよね。

酒井:思い出したんですけど、はじめの頃にチーム内でちょっと揉めたんですよね。岡村さんと太田さんは12月から検証を進めていたので、ある程度見えているけれど、中村さんと僕は解像度が低い状態の中で、、1回目のヒヤリングはネガティブな結果でした。検証ポイントの認識も太田さん・岡村さんと中村さん・私でブレていたので、定例会議で意見が食い違ったりしましたね。だからこそ、「次はこうしよう」というすり合わせをちゃんとやった記憶があります。

中村:顧客である医療機関の先生たちにとってはここが解消されるといいんじゃないかいう予測が「そうじゃないんだよね」とことごとくズレていましたよね。だからそもそも文脈と構成が合っているのかを何度も問い直して、気がついたら「これ、うまくいくんじゃない?」というところまで来ていた感じです。

そもそも、僕らがやりたいサービス、ありたい姿のなかに医療機関の動機付けとなる熱量を探していくというのはすごく難しいことなんです。そういう意味でも、岡村さん太田さんの「読み」がすごかったんだなぁと。「クロンスマートパス」の構想の裏にあるのは、素人ではなかなか気付けないニーズだったんだと思います。

最小限のリソース、最短の検証で結果を出すために

太田:新規事業ということもあり、最小限のリソースで最短で検証を回すというのが命題でした。時間との戦いが一番大変でしたよね。しかも僕ら全員専任じゃなく兼務からのスタートで。

酒井:そうですね。なのでヒアリングや検証をまわす上で何を重視すべきなのかを毎日のように膝を突き合わせてすり合わせて、「次のヒアリングではこのポイント確認しようね」っていうのを結構ずっとやってた印象はありますね。なんとなくのままヒアリングしてしまうと、サービスとして世に出たときにどこが良くてどこが良くないのか分からなくなっちゃうので。

太田:話し合いの場でちゃんとみんな意見を言うし、次に何をしなきゃいけないかを決めてからちゃんと終わっていくチームですよね。あとは課題にぶつかったときに「これじゃだめだね」とはならなくて「どうやったら乗り越えられるかな」というところにエネルギーを注いでいるのも強いかな。もうひとつ、プロダクト開発ってビジネス側とプロダクト側で分断が起きることもあるけど、酒井さんや中村さんと一緒にやってていいなと思うのが、そこに明確な境界線がないこと。僕らビジネス側もプロダクト側を意識しているつもりですし、プロダクト側もビジネス側を見てくれていて、共通の価値観を持ってちゃんと同じ方向を向いている感覚があります。

酒井:すごいフラットな感じはしますよね。こういうのって最初に企画を持ってきた太田さんやプロダクトマネージャーの僕の意見が変に尊重されたりするチームになってしまうことがたまにあるんですけど、今回は誰が何を言っても耳を傾けて、課題に対しても否定せずどうしようかと思えるチームになっていたと思います。

中村:おそらく、最初の岡村さんと太田さんの問題設定がMICINとして普遍的だったんだと思います。例えばオンライン診療って通院時間も減らせるしすごく便利じゃないですか。でもヒアリングで「便利でした」と回答してくれた人に「次はどうしますか」と聞くと「対面で行きます」と返ってくるんです。我々が描いている医療の形と、患者さんにとっての医療の形がちょっと違うことを自覚して、単に「便利にする」だけでなくもっと広いスコープで考えないと、多分打開策は見つけられないなっていう課題感はみんなの中にあったんです。だから今回「クロンスマートパス」が実現すれば医療の体験が広がることが見えていたので、「ここ頑張んなきゃ」っていうのは共通認識としてあったんじゃないかな。

太田:4月ごろからはプロダクトの開発もあったし、セールスもすぐにプレセールスができる状態を整える必要があって、ベータ版を6月に出してから多くの医療機関に「すごく良いね」と言ってもらいながら申し込みをいただいている状態なんですが、これをやっていくなかで誰が一番大変だったかってもちろん「全員」なんですよね。功労者を一人に特定しずらいなと思っている中で、MICIN AWRDでチームとして表彰されたことはすごく良かったです。個人ではなくて、「チーム全体」がちゃんと評価されたことが一番嬉しいことですね。

岡村:もちろんチームとして評価いただいているところは嬉しいですし、みんないろんな案件を抱えていて、それぞれが忙しい中でスケジュール通りにリリースできて、テスト段階でもちゃんと使われていてポジティブな反応が多いことが、僕らとしては誇らしいですよね。

MICIN AWARDの表彰状と共に

この先に思うこと

太田:無事にリリースできたわけですが、今まで通りこれからも「患者への価値」というのを第一に考えて作っていくことが大事なのかなと思っています。そこがブレなければ、無理に売上を作るような形にはならないと思っているのでこれはみんな共通認識で続けていくところ。その中で電子処方箋やオンライン診療、オンライン服薬指導など、我々が元々持っているサービスや外部サービスへの対応を進めていく中で、医療におけるあらゆる負の解消の中心を我々が担っていきたいなと思っています。

酒井:良いと思ってもらえたからこそ使ってくれて、それが自然に広がっていくプロダクトがやっぱり僕は素晴らしいものだと思ってます。だから、気づいたら自分の知り合いが使ってくれていて、「便利だね。これのおかげで通院が少し楽になったよ」と言ってくれている世界をめざして行きたいですね。純粋にユーザーのことを考えて、使いやすいサービスとして育てていきたいです。

岡村:「クロンスマートパス」の元になっているコンセプトは、MICINにおけるOMOを担うことなんです。だからこのコンセプトを実現できるように、オンラインとオフラインの両軸からより良い医療体験を提供できるよう、リリース後も頑張っていきたいですよね。

中村:僕も同じような感じですね。そもそも通院日というものを現状患者さんたちがどう捉えているのかをちゃんと把握して、プロダクト開発に反映して行きたいです。

次回はエンジニア・デザイナー陣の座談会になります。
以下ご覧ください