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治験を変革するMiROHAとは:後編

治験プロセスのデジタル化を推進する「MiROHA(ミロハ)」というプロダクトの責任者をしている草間です。治験は、業界の外の人からみるとあまり馴染みのない事業領域だと思います。なぜMICINがこの領域で事業を行っているのかや、事業としての面白さを後編ではご紹介していきます。

前編はこちらです。

治験の課題をMiROHAはどう解決するの?

「治験には医療現場と患者さんと、双方にペインがあるんですね。MiROHAというプロダクトは、それをどのように解決していくんですか?」

MiROHAは下記のようなプロダクトのミッションを掲げています。

「もっと簡単に」、というキーワードは医療現場に向いたものです。既存のアナログな業務に起因する様々な「無理」や「無駄」をMiROHAは解決していきます。例えば、医療現場ですぐにデータを記録したいというニーズから、紙が使われていました。紙にデータを一時的に記録することで、そこから治験用のデータベースに転記する手間が発生します。間違いなくデータが転記されているのかを、目視で確認するプロセスも発生します。入力時点で、紙からデジタルに置き換えることで、そもそもの業務のあるべき姿を実現するのがMiROHAです。医療現場の目線でMiROHAを捉えると、治験業務の効率化を実現するSaaSといえます。

一方で、「もっと身近に」、というキーワードは患者さんに向いたものです。そもそも治験に入るか検討するためにも、治験を実施している医療機関に患者さんが出向き、説明を聞く必要がありました。遠方にお住まいの患者さんにとっては、話を聞きに行くこと自体が負担になります。そもそも治験の存在自体を探すことも簡単ではなく、そもそも探そうとすら思わない、という課題もありました。患者にとってMiROHAは、治験に簡単にアクセスできる入り口となるツールです。

以前、MiROHAのデザイン原則を定めるワークショップを開催した際には、様々なキーワードが出てきました。ユーザーの方々へのインタビュー結果を取りまとめながら、Biz、PdM、Engineerなど、MiROHAの全てのメンバーが参加し、どのようなプロダクトに仕上げていきたいのか、意見を出し合いました。

それらをぐいっと集約し、下記の4つを2022年版のデザイン原則として掲げ、プロダクトの進化を日々、進めています。

Easy | MiROHAの無かった世界に戻れないほどに
Reliable | MiROHAを使うからこそ間違いの起きない体験を
Embedded | MiROHAの中と外をなめらかに繋ぐ
Intimate | 医療者が安心を届ける手助けを

おそらく数年経てば、更に解像度が上がり、このデザイン原則自体もより進化したものになっていくと思います。

プロダクトを進化させる上での難しさは?

「MiROHAのデザイン原則について理解しました。ではそれに則ってプロダクトを進化させる上での難しさはなんですか?」

まず治験ドメインそのものの難しさがあります。MiROHAチームがユーザーとしてリアルの治験業務に携わったり、患者として治験に参加したりすることは難しく、身を持って課題を知ることが困難です。そのため、こちらからユーザーに寄り添い、課題を見つけていくことが重要になります。インタビューを行って課題を見つけて、プロトタイプを作成して検証する。そして当たりが見えたらプロダクトに落としてフィードバックをもらう。アジャイルの考え方に則って、これを何度も絶えず繰り返すことでプロダクトを磨き込みます。

治験領域で求められる堅実な進め方と、アジャイル開発による貪欲に変化を追い求める進め方とを掛け合わせることは非常に困難です。患者さんの生命や健康を預かる基幹システムですので、新しいバージョンをリリースしたら止まっちゃった、というのは洒落になりません。リリースごとに、バージョン管理・仕様書のアップデート・テスト実施要項の更新などを丁寧に行っていく必要があります。これらの作業を効率化すべく、皆で知恵を出しながら業務改善、振り返りを毎週のように行っております。

デジタルドリブンな治験のあるべき姿は、まだ確立したものではありません。そのため、検証を繰り返すなかでプロダクトも大きく変わっていき、油断すると技術的負債がどんどん積もっていきます。負債が膨大になってくるとプロダクトの変化スピードが鈍くなり、かつ品質が落ちる懸念があります。これを防ぐため、エンジニアチームには技術的負債を貯めないような改善も積極的に行ってもらっています。自動テストの積極的な導入や、リファクタリング、ドメイン駆動設計を意識した設計など。エンジニアメンバーが自律的に改善に取り組めるような進め方ができるよう意識しております。

Vertical SaaSとしてみたときの面白さは?

「医療現場や患者さんの課題を、どうMiROHAが変えていくのか、少しずつイメージが湧いてきました。でも治験向けのSaaSって、やっぱりニッチなイメージもあります。MiROHAに関わる上での面白さはなんですか?」

治験の業務を効率化し、患者にとっての治験アクセスを改善するMiROHAというツールは、治験というニッチな領域に特化したVertical SaaSです。ニッチと言いつつ、実は治験プロセスには年間で2,000億円以上が費やされています。

コロナの感染拡大により、治験プロセスのデジタル化も海外では大きく進んでいます。その変化が国内にやってくると、不可逆な変化が起きます。フィルムカメラがデジタルカメラに淘汰されたように、2,000億の市場がガラッと変わるでしょう。

「Vertical SaaSの市場をみるとき、よくWhy Now(なぜ今、市場に参入すべきか)という問いがでます。治験のデジタル化のWhy Nowを教えて下さい」

国内の治験プロセスのデジタル化を考えるとき、大きなトレンドが2つあります。1つは海外のデジタル化の進展、もう1つはグローバル治験の比率の拡大です。

海外の治験プロセスのデジタル化は、コロナのパンデミックで大きく進みました。下の図のように、治験でのオンライン診療の導入も増えています。コロナが蔓延している中で治験のためにわざわざ病院に来たくない患者さんのニーズと、デジタルツールを普及させ治験の効率化を図りたい製薬企業のニーズが合致したからです。正直、医療現場にはデジタル化に伴う負担増のしわ寄せも来ているらしく、海外の事例がベストかといわれると、難しいところもありますが。

(出典:https://www.clinicaltrialsarena.com/analysis/dct-adoption-tracker-q1-update/)

治験には、国内だけで実施するものと、日米欧のグローバルで実施するものと、2種類あります。後者がグローバル治験と呼ばれるものです。治験を実施する際は、国は違えど、同じ条件で実施することが求められます。海外で実施しているデジタルベースの治験プロセスを、日本でも再現できる体制を構築する必要があります。治験に占めるグローバル治験の割合は、下図の通り、年々高まっています。日本の治験現場には、グローバルスタンダードを満たし、かつ日本固有の治験プロセスにも配慮したツールが求められています。

そうした背景の中で、平成でもなく「昭和な」プロセスが残っている日本の治験において、医療現場に寄り添ったデジタル化は急務です。その領域で国内トップのプラットフォーマーとして実績を残せているのがMiROHAなのです。

MICINのビジョンとMiROHAの関係は?

「治験領域やMiROHAについての理解が深まりました。最後に、MICIN全体のビジョンの実現に、MiROHAの成長がどう繋がるのかを教えてください。」

MICINのビジョンは「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」です。既に海外では使えるお薬が、日本での治験にコストや時間がかかりすぎることで、もし自分の家族が病気になったときに使えないとしたら。。。

それは、MICINのビジョンの実現からは遠のいてしまうと思います。

治験というニッチでわかりにくい分野ですが、日本の医療の根幹を支える極めて重要なプロセスです。
少しでもご興味をお持ちいただけた方には、気軽にお話させていただければと思います!

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