開発チームがプロダクト改善したくなるVoC(お客様の声)の伝え方3選
こんにちは!株式会社MICIN(マイシン)で、「オンライン診療サービスcuron(クロン)」というプロダクトのカスタマーサポートをやっている菊地と申します。
本記事は、CS HACKさん企画の「CS HACK Advent Calendar 2022」の12月7日の記事として書いています。
※株式会社MICINの公式note「MICINの邁進Days」とのマルチポストでもあります。
本記事では、医療系ITベンチャーでカスタマーサポートを2年半みっちり(?)やってきた経験をもとに、「開発チームにVoCを伝えるコツ3選」を書いています。
カスタマーサポートの仕事をしている方で、
・VoCを集めてはいるけど、うまく活用できていない気がする
・VoCを開発チームに伝えているけど、他の改善策が優先されて採用されない
・プロダクト改善にもっと貢献したい!
と思っている方の参考になれば嬉しいです!
(なお、本記事内ではカスタマーサポート=CSと表記します。)
(1)大切な「お客様の声」、社内チャットに垂れ流しになっていませんか?
本題に入る前に、VoCってなんだ?というところをおさらいします。
「VOC(Voice of Customer)とは、対応中に得られる顧客からの声です。VOCの収集や蓄積を行い、コンタクトリーズンごとに分け分析を行うことで、今後の戦略や施策に反映するなどPDCAを回すことができます。」(出典:Bellsystem24 コールセンターWikiより一部抜粋)
つまり、お客様からいただいたご意見はぜーんぶVoCと見なすことができます。(スーパーの一角に紙でペタペタ張り出されている「お客様の声」も、VoCの1つと言えますね)
どんな企業さんでもあると思いますが、プロダクト開発や拡販が進んでくると、社内のどこからともなく「お客様の声をもっと聞いて改善につなげたいよね」「経営陣/開発チームに顧客の声が届いてないよね」「お客様の声は全社員が目にするべき!」などの意見が出てきて、Slackなどの社内チャットツールに「#users-voice-minnamitene」なんて名前のチャンネルが誕生すると思います。
そのチャンネルにVoCが投稿され始めると、どのメンバーも「これ超いい!」「お客さんを近くに感じられる」「こういう意見もあるんだぁ」などと反応してくれ、「CSが日の目を浴びた!」なんて気分になったりして、とっても嬉しいですよね。
ただ、人間は慣れる生き物です。
チャンネル作成から数週もすれば、VoCが川のように流れていくだけのチャンネルになってしまい、せっかくチャンネルに関係者を招待したのに、その先に何も生み出せていない、なんて事になってしまいます。
また、ここでCSをやっていて歯がゆい場面を1つ紹介します。
お客様「〇〇ってどうにかならないの?使いづらいんだけど。」
CS「申し訳ございません。貴重なご意見として関係部署に共有させていただきます。」
お客様「うん、よろしくね。」
CS「はい、それでは失礼いたします。」
CS「(はぁ… この意見って前も別のお客様からいただいたんだよな… こういう意見があるって開発チームに伝えたのに、いつになったら直してくれるんだ…)」
VoCが活かされないことは、CSにとってフラストレーションになるのはもとより、開発チーム、ひいては会社全体の機会損失に繋がります。
CSがVoCを開発チームに伝え、プロダクト改善が回る状況を作るためには、開発チームが思わず開発したくなる情報の渡し方をする必要がありそうですよね。
ここからは、クロンのCSで実行している、開発チームにVoCを伝えるコツを3つご紹介します。
(2-1)開発チームにVoCを伝えるコツ その1「顧客の生の声を見せ、顧客を身近に感じてもらう」
これは、前述のSlackなどの社内チャットにVoCのチャンネルを作ることで半分くらいは達成できます。
しかし、開発チームも忙しいですし、VoC同士が正反対の内容になっていることもあるので、ひたすらVoCを見せられても「どれを開発したらいいんや」となってしまいます。
なので、できれば「開発側に共有するVoCを選定する」という作業を挟んだ方がいいです。
選定の基準はプロダクトや企業によって様々ですが、「チーム/プロダクトのKPI達成に寄与するか」「LTVの改善に貢献するか」「顧客満足度の向上に繋がるか」など、事業部や会社全体に影響があるVoCの方が興味を持ってもらえることが多いと思います。
(VoCの選定だけでもう1記事書けてしまうので、本記事内ではここまでにしておきます)
(2-2)開発チームにVoCを伝えるコツ その2「背景を説明し、開発する意味を握る」
ここからは、CSが介在価値を発揮するところです!!
(以下、実際にクロンのCSに寄せられたVoCに基づいてお話しします)
例として、お客様から「ログアウトボタンを押したら『本当にログアウトしますか?』という注意書きを出してほしい」というご要望をいただいたとします。
これをこのまま開発側に伝えたとして、
CS「お客様から「ログアウトボタンを押したら『本当にログアウトしますか?』という注意書きを出してほしい」というご要望がありました」
開発「よし、注意書きを出そう!要件定義するぞー!」
とはなりません。それよりも、
開発「ふーん…(なんでそんなの必要なんだろう…)」
となる可能性が大ですね。
人間は「理由」に動かされる生き物です。
ゆえに、開発チームのメンバーを動かすためには、
CS「お客様から「ログアウトボタンを押したら『本当にログアウトしますか?』という注意書きを出してほしい」というご要望がありました。」
につづき、
CS「この要望をくださったお客様は、ご高齢の男性です。手先の細かい操作が苦手で、普段から思わぬ場所をタップしてしまうそうです。万が一ログアウトをしてしまうと、その後IDとパスワードを入力するハメになり、すごく大変なんだと仰っていました。注意書きを1つ挟むだけで、こちらのお客様はとても助かると思います。」
…これを聞いたら、「改善してあげたいな!助けてあげたいな!」と思う人がほとんどなのではないでしょうか?
VoCを伝える際は、その背景にある事情を伝え、「この開発にはこんな意義があるんだ」という認識を一緒に持ってもらうことが大切です。
(2-3)開発チームにVoCを伝えるコツ その3「定量データで後押しする」
とはいえ、「その2」ばっかりやっていると、「CSの人、お客さんに対する思いが強いのはいいけどさ、開発チームのリソースとか、開発スケジュールとか全然考えてないよね」なんて言われてしまいます。
そこで、用意すべきは定量データです。
定性データで心情に訴えたあとは、定量データで後押しができると、「定量と定性のバランスが取れた真っ当な意見となる→開発要望として採用される→開発&リリースしてもらえる!」という流れになります。
先程の事例でいうと、VoCを共有する前に、以下の定量データを集めておいたとします。
・ログインに関するお問い合わせの件数(仮に100件/月とする)
・ログインに関するお問い合わせをされるお客様の高齢者率(仮に20%とする)
・ログインに関するお問い合わせの対応に必要な時間(仮に20分/件とする)
これらの定量データを踏まえ、
CS「この要望をくださったお客様は、ご高齢の男性です。(中略)この注意書きがあるだけで、このお客様はすごく助かると思います。」
につづき、
CS「ちなみに、この改善をした場合、最大で100*0.2*20=400分、つまり約6.7時間/月のCSの業務時間が削減される計算になります。お客様も助かるし、我々の業務効率も上がるので、ぜひ開発をお願いしたいのですが、今月のリリースに載せるとして工数に余裕はありそうですか?」
なんて言えると、「そうですね、今月は厳しいかもですが、来月のリリースになら載せられそうです」なんて返事が返ってくるわけです。
開発スケジュールまで握れたら、あとはCSから「進捗どうですか^^」とちょくちょく聞くだけで、VoCが反映されたプロダクト改善が行われる流れが作れます。
※実際に、クロンではこのVoCを反映した開発がなされ、ログアウト時にはこんな注意書きが表示されています。
「ただでさえ忙しいのにそこまで追いかけなきゃダメか…」と思われるかもですが、冒頭の
CS「(はぁ… この意見って前も別のお客様からいただいたんだよな…(後略))」
をなるべく起こさないためには、このくらい積極的に開発チームと関わってもいい、むしろ関わるべきではないでしょうか。
(3)まとめ「問い合わせ対応だけしている組織」から脱却しよう
CSって、「誰もが憧れるかっこいい職業」ではないかもしれません。
むしろ、「ひたすら電話に出るお仕事」「クレーム対応でとにかく大変」なんてイメージを持たれている職業かと思います。
ただ、私は2年半CSをやってみて、「CSってなんてクリエイティブな職種なんだろう!!」「VoCを武器に、CSから攻めの仕事ができたら超面白いな!!」という印象を持ち、CSが攻守ともに大活躍している未来を想像してワクワクしています。
目の前のお問い合わせに忙殺されてしまうことも多いですが、少しずつ「問い合わせを受けてくれている、優しい人が多いチーム」から「定量と定性の間を自在に行き来しながら、プロダクト(ひいては経営)改善ができるチーム」に近づいていきたいなと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
<おまけ>
MICINでもアドベントカレンダーを実施しています!
MICIN Advent Calendar 2022
主に開発チームが執筆していますが、代表の原の投稿も予定されていますので、ぜひチェックしてみてください。
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