医療の理想像を描き続ける、MICINのデジタルセラピューティクス事業とは:後編
MICINのDTx事業部についてご紹介する記事。前編では、デジタルセラピューティクスの現状や課題、やりがいなどについて基本的な面をメインにお伝えしてきました。
後編のこちらでは、
「MICINのDTx事業部の雰囲気は?」
「働くうえで専門知識は必須?」
「具体的にはどんな仕事をしている?」
など、より具体的な部分をご紹介したいと思います。
前編に引き続き、部長の花館さんにお話ししてもらいました。
DTx事業部にはどんなメンバーがいる?
大きく分けると、ざっくりこんなメンバーがいます。
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・事業自体を作っていく人たち
・プロダクトを企画する人たち
・プロダクトを作る人たち
・プロダクトが国に承認されるために必要な規制対応をしていく人たち
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それぞれがそれぞれの分野で高い専門性を持ちつつ、連動しながら取り組んでいる形ですね。
企画は主に、患者さんやお医者さんからさまざまなお話をお伺いして、医療現場のニーズを探ります。我々はこれを「アンメットメディカルニーズ」と呼んでいるのですが、これを見つけてきて、どんな打ち手がフィットするか、どんなプロダクトがあればより便利になるかなどを考えていきます。
そこが決まったら、次はプロダクトをデザインしたり、エンジニアがアプリを作る工程があり、今度は国の規制に対応していくというフェーズに進みます。
プロダクトのデザインでは、我々だけでなく、関わるお医者さんや看護師さん、患者さんも巻き込んで一緒にデザインをしていきます。それをプロダクト開発の専門の担当者が詳細に設計してアプリを作っていくことになります。
一方で、品質をどうマネジメントしていくか、安全性を担保していくかについて検証していきながら、「本当にこれって効くのか」「安心して使えるか」を確かめるために、治験と呼ばれるプロセスを進めていくことも重要です。
治験とは、患者さんに参加していただいて、実際に治療を受けながら検証することです。これで効果や安全性が証明できたら、今度は規制当局に対して薬事の規制へ対応する承認のプロセスへ進みます。
こんな風に進めていくので、一つひとつを完全に分担して切り取ることはできなくて。それぞれがチームとして関わっていくことになるので、役割は分かれているのですが、違った分野のプロフェッショナルたちが一緒に話をしながら、お互いの分野の理解を深めつつプロダクトを作っていく場面が多いですね。
医療に関するプロだけでなく、IT、法律などさまざまなプロが分担している?
その通りです。でも、本当の意味でのデジタルセラピューティクスの専門家っていうのは実はいません。なぜならデジタルピューティクス自体が最近できたばかりの言葉なので、我々は自分たちがバックグラウンドに持っている専門性を活かしながら、デジタルセラピューティクスに最適化されたやり方を考え、この領域のパイオニアとして「医療の現場にある見えない課題を改善するにはどうしたらいいのか」を常に考えています。
見えていない課題自体を見つけにいくところからなのですね。
そうですね。「なにか困っていることはありますか?」と聞いて「これが困っています」と言語化されていることは、ほとんどないかもしれません。
なぜならすごく大変だったり面倒なことでも、患者さんや医療機関は「そういうものだ」と思ってやっていることも多いんです。だからこそ我々が一日の動きなどを丁寧にお伺いしていく中で「ここがひょっとして?」と焦点を当ててどんどん深掘りしていきます。
現場で「当たり前」になってしまっていることに対して、「これってデジタルですごく貢献できるんじゃないか」という発想を生み出していくイメージですね。
例えばどんな課題が見えていますか?
例えば、補助人工心臓など毎日身体に医療機器をつけて生活されている患者さんの場合は、その機器に表示される数字を毎日手書きで記録して、その写真を撮り、医療機関に送っていることがあったりします。医療機関側はそれを見て問題は無いかを確認し、何かあれば患者さんに電話をして……。ただ、日々の記録を毎日見たり、日々の変化を他の日と比較したりはなかなか難しい。
でも、専用のアプリがあれば数字を入力すると簡単にグラフ化されて、医療機関も患者さんも確認がしやすくなるだけでなく、それまで点でしか見られていなかったものが線で認識できることもあります。
つまり、今までの方法では「今日はなんだか調子が悪いけど、こういう日もあるよね」という程度までしか分からなかったものが、「こういう条件が揃うと調子が悪くなりやすい傾向にある」とか「なんだかまずいことが起こっている予兆かも」と、より早く適切な対処がしやすくなるはずなんです。
となると、医療機関さんや患者さんと一緒にプロジェクトを推進することが多い?
そこは必要不可欠なポイントですね。お薬の開発であれば、ある意味「先生からもらったお薬を飲めば効く」というシンプルな仕組みが成立します。でもアプリって、我々が想定した通りに使ってもらって初めて意味がなされるものなので、こちらが勝手に作って「どうぞ」と渡すのでは成立しないんです。だからこそ、最初から先生や患者さんを巻き込んでいくことがすごく重要なプロセス。現場の人たちの声を聞いたりニーズを深掘りしながら、一緒に作っていくことをとても大事にしています。
− より成果を高めていくためにチームでしていることは?
四半期に一回チーム全員が集合して、その時のトピックを一緒に考えて共感していく「DTx DAY」というイベントを開催しています。
その日は丸一日を使って、あるときはアプリの専門家ではないメンバーが、エンジニアたちが作ってくれたアプリを実際にその場で触ってみて「ここはこうした方がいい」とか「これすごいいいね」と話すこともあれば、規制対応をしているメンバーがエンジニア陣と共に「特許を取るにはどうしたらいいか」というトピックスを考えることもあれば、我々が実現したい未来についてみんなでに語り合うことも。
専門性にすごく偏ったトピックを扱ったとしても、メンバー全員に分かるように説明をしながら、率直に質問をあうことで理解を深めていく空気がありますね。そういう意味ではうちのチームの特徴は「好奇心がとても強いこと」と言えます。
だからこそ「他人の役割だからそちらでどうぞ」といったスタンスのメンバーはあまりいなくて、むしろ「覗きたい」というか(笑)。「実態はそんなことが起こってるの??」といった生々しい話まで突っ込んで話したりします。
他には、不定期で「サイエンスデイ」というイベントもあります。科学やデザインなど、さまざまな分野の第一線で活動する専門家を呼んで、最先端の知識に触れ、インスパイアされる機会を作っています。
MICINのDTx事業部に向いていそうな人は?
冒頭の話にもにつながるのですが、DTx事業部にはいろんな専門性が必要なので、やはり好奇心がすごく強い方に来ていただけると、毎日ワクワクしながらお仕事ができると思います。
それに、他の人が困っていることに対して「自分の専門性を使って解決できるかもしれない」と好奇心を持って取り組むと、新たな道がポッと見えたりもします。
難しい課題を乗り越えるためにも好奇心は大切で、「この先の世界を見たい」とか「これを乗り越えた後の医療現場はどうなるだろう」と思う事が熱意になって、これまで以上の力を発揮できる、そんな人がメンバーになってくれると嬉しいですね。そうしたらすごく強い組織になるのではと思います。
デジタルセラピューティクスは新しくとっつきにくい分野かもしれませんが、日本の医療をよりよくする次世代のアプローチだと信じてます。
少しでもご興味をお持ちいただけた方には、気軽にお話させていただければと思います!