見出し画像

2023年 プロダクト開発全体の振り返り

この記事は MICIN Advent Calendar 2023 の 最終日の記事です。
前回は阿部さんの開発効率を追い求めた実装プラクティス集 でした。


はじめに

MICINのHead of Engineeringの坂本です。

今年の10月にHead of Engineeringのバトンを前任の方から引き継ぎ、このAdvent Calendarについても大トリを務めることになりました。

私のメインミッションは、MICINがビジョンやミッションに沿って最高のプロダクトを生み出せるようになることで、今は、そのために必要不可欠な、プロダクト開発に関わる一人ひとりが輝いて最高のパフォーマンスを出せて、輝く個々人が力を合わせることにより難しい問題も解決できる環境づくりに注力しています。

この記事では、MICINにおける2023年の各プロダクトのリリース、横断チームによる取り組み、プロダクト開発を支えるエンジニアリングマネジメントの取り組みといったハイライト的な内容を振り返ってみようと思います。

2023年のプロダクト開発のハイライト

その前にMICINの事業全体について

MICINは「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」というビジョンと、「医療をもっと身近に簡単に。健康医療データから一人ひとりの生き方に新しい選択肢をつくる。」というミッションを掲げ、創業当初からの祖業であり業界のリーディングプレイヤーにもなっているオンライン医療事業、アナログな対応の多い治験の効率化を支援する臨床開発デジタルソリューション事業、治療用(治療補助含む)のアプリケーションの提供を通して新しい治療の選択肢を提供するデジタルセラピューティクス事業を展開しており、それぞれで複数の自社プロダクトを開発・提供しています。

尚、MICINは保険事業も展開しており、グループ会社にMICIN少額短期保険があります。保険事業では自社プロダクトの開発はしておりませんので、本記事のトピックとしては割愛しますが、世の中に必要とされる保険商品を提供していますので、ぜひご興味がおありの方は以下のページをご覧ください。

オンライン医療事業

オンライン医療事業では、 2016年4⽉に提供開始した祖業のオンライン診療サービス「curon(クロン)」、2020年のCOVID-19の際に爆速で誕生した薬局向けサービス「curonお薬サポート」、そして昨年に誕生した医療機関のキャッシュレス決済サービス「クロンスマートパス」の3つのSaaSを提供しています。

更に、これらクロン関連のプロダクトに加え、8月には新たにオンラインピル処方サービス「ピルマル」の提供を開始しました。

2023年のハイライト
2023年はcuronお薬サポートでビジネスモデルのリモデルという大きな取り組みがあり、このリモデルを想定した薬局の本部管理機能と店舗管理機能の大規模なリアーキテクチャ対応に取り組みました。また、curonやクロンスマートパスも含めて、以下のような患者さんに更なる利便性を提供する機能、世の中の動きに合わせたシステム対応のリリースをしています。

2023年のクロン関連プロダクトの主なリリース

  • 2月:電子処方箋制度への対応

  • 5月:LINE連携対応

  • 10月:インボイス制度への対応

  • 11月:クロンのアプリケーションから処方箋ネット受付サービスへの導線追加

上記の他にも、クロン関連プロダクトで年間200件以上のエンハンス等のリリースをしており、MICINの創業期から提供されているクロン系のプロダクトが現在でも日々進化し続けていることが見て取れます。
また、今年は8月にピルマルの提供が始まりましたが、プロダクト開発は春先に始まりスピード感を持って7月にリリースされました。

担当エンジニアのAdvent Calendar 2023記事

臨床開発デジタルソリューション事業

治験のデジタル化を推進する同事業のブランド「MiROHA」では、オンライン診療を活用した「MiROHA オンライン診療」、患者さんへの治験の説明や同意をリモートでも行える「MiROHA eConsent」、そして治験業務で多大な負荷になっている治験記録の管理をデジタル化する「MiROHA eSource」の3つのSaaSを提供しています。

2023年のハイライト
2023年も多くの中核病院にMiROHAの新規導入の内諾をいただいていますが、プロダクト開発においてもそれぞれのプロダクトで顧客目線での開発が着々と進み、オンライン診療機能の刷新やeConsentをご利用いただくにあたっての全体的なUX改善など、多くの機能リリースを行いました。また多要素認証への対応等、規制やガイドラインに準拠して関係者に安心してご利用いただくための開発にも力を入れています。

上記のような開発を進捗させながら、実際に何かあった際に顧客影響を最小限に食い止めるための準備もチームを挙げて取り組んでおり、1月には社内(情報セキュリティ部主催)でMiROHAを対象にセキュリティインシデントを想定した社内GameDayを行い、その後7月にはAWS開催のセキュリティインシデント疑似体験の調査ワークショップ(GameDay)にMiROHAのエンジニアチームで参加し、その教訓を活かした形で障害時のオンコール体制を整備しています。

担当エンジニアのAdvent Calendar 2023記事

デジタルセラピューティクス(DTx)事業

DTx事業では、医学的エビデンスに基づいたソフトウェアによる介入で、疾病の管理のみならず、予防や診断、治療、介入を支援する手法を開発しており、納得して治療に取り組み、安心して治療生活をおくれる世界を目指しています。すでにリリースされているブランドとしては、セルフケアの習慣化を支援する「MedBridge(メドブリッジ)」があります。

2023年のハイライト
DTxについては、元々は治療用アプリや治療補助アプリなどにより新しい治療の選択肢を患者さんに提供するという大きなゴールがあり、2023年は特に認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)のアプリケーションの開発が大きく進捗しました。具体的な成果としては、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の研究用のプロダクトの開発が完了しています(関連記事)。

また、CBTに限らず、Medbridgeの多くのプロダクトで開発が完了するなどの進捗が見られています。
ここで、DTxのプロダクトを開発するために、主に以下のようなことが必要で、これらがプロダクト開発に関わる関係者に求められます。

  • それぞれの疾患領域等に関する複雑なドメインの理解

  • 治療効果を意識した場合に、想定通りに継続して使ってもらうためのユーザビリティ

  • 医療機器にしていくことを想定した高いレベルの品質管理への対応

  • 探索臨床や治験で適切にデータを分析できるようなモデリングと、そのデータにかかわるセキュリティや信頼性の確保

DTxでは、時として医療機器になることを想定したQMS等への準拠や関係者からの厳しい要求への対応も必要なることがあり、プロダクト本体の開発は完了したが、データの運用管理に関する関係者からのフィードバックがあり、データ基盤、SRE、セキュリティ等の関係者の協力も得ながらチーム一丸となって急いで要求への対応をした、といったこともありました。

担当エンジニアのAdvent Calendar 2023記事

共通・横断系のハイライト

共通プラットフォーム

MICINでは、サービスやプロダクトの多角化が進む中、マイクロサービス化を重点施策に位置付けており、各プロダクトから呼び出される共通プラットフォームとして、ビデオ通話基盤、アカウント管理基盤を構築しています。アカウント管理基盤に関連して、医療機関や薬局といったオンライン医療のユーザを包括的に管理するプロダクト管理ツール(Product Administration Tool:通称PAT君)の開発もしています。また、MICINの全社ミッションで、健康医療データの利活用で皆さんに新しい選択肢を提供することを掲げていますが、そのために必要な全社データ基盤の整備も共通プラットフォームの一つとして対応しています。

2023年のハイライト
まずデータ基盤について、年始から本格的にプロジェクトが開始され、データソリューション部のPdMに強力なプロジェクトリード支援をいただきながら、上半期(1-6月)にはDTxのMedbridge関連のプロダクトを対象としたデータ基盤のコアとなる部分が構築され、その後も次々と基盤が整備されました。

アカウント基盤については、クロン系の3つのプロダクトのアカウント管理基盤への統合が進み、来期以降は向けて実現難易度の非常に高いアカウント基盤の整備に本格着手しているところです。
ビデオ通話基盤については、昨年に初期構築が完了しており、今年は通話品質やシステムの信頼性といった非機能面を中心に強化施策を進めています。

担当エンジニアのAdvent Calendar 2023記事

SRE / セキュリティ/ コーポレートIT

MICINは重要インフラである医療業界にサービスを提供している事業者として、医療業界のガイドラインなど多くの厳しい非機能要求をクリアしなければなりません。それを支えているのがSRE、セキュリティ、コーポレートITです。MICINプロダクトのインフラ(主にAWS上に構築)は、統制サービスの導入により設定不備によるセキュリティ事故が起きにくくなっており、その上で、外部からの攻撃に対する堅牢性を高めたり、データの冗長化も十分にとって信頼性も確保しています。また、Webやネットワークの脆弱性診断等を内製で対応可能です。こうした対応の他、特に事業推進のためのセキュリティ要求水準の高いDTx事業では、セキュリティ関連の顧客対応の支援にも入り込んでいます。この他、社内のセキュリティの維持と独自ツール開発による業務や開発の効率アップを両立させる役割を担っています。

2023年のハイライト
今年は以下のようなさまざまな取り組みを行い、特にサイバーレジリエンス、プロダクト環境整備に関する改善、生成AIを活用した業務改善で進捗が見られました。

  • セキュリティインシデントを想定した社内GameDayの主催

  • AWSのフォレンジクスマニュアルの整備

  • 社内ITのSIEMを活用したSBOMも含めたセキュリティリスクの検知や管理業務の自動化

  • プロダクトに対するレッドチーム演習(12月中に開催予定)

  • 独自ツール開発によるコーポレートIT業務の自動化

  • Chat GPTをはじめとする生成AIの全社業務への利活用推進

  • GitHub Copilotの導入

  • DTxへの稼働環境の自動デプロイツール導入

  • ビデオ通話基盤へのメッシュアーキテクチャ導入

担当エンジニアのAdvent Calendar 2023記事

エンジニアリングマネジメントのハイライト

プロダクト開発で最大のパフォーマンスを発揮するために必要なエンジニアリングマネジメントについてもハイライトとなるものをまとめたいと思います。昨年から継続した施策に加えて、今年はエンジニア文化委員会や技術強化委員会の発足をはじめとして、新たな取り組みもいくつか始まっています。

  • エンジニア文化委員会(6月〜)

    • 2023年のエンジニアリングマネジメントで最も大きな動きであり、MICINの理想のエンジニア文化を作っていくことをミッションとする委員会

    • Head of Engineeringが委員会のリードで、事業部や横断チームのエンジニアチームリーダやエンジニア文化をよくすることに使命感のある有志でメンバを構成構成

    • 6月と11月に委員会メンバでショートオフサイトを開催し、Tech Leadやエンジニアマネージャのあり方、および2024年のエンジニア組織運営の骨格となる施策について議論

  • エンジニア勉強会(4月〜)

    • エンジニア文化委員会発足前の4-6月の四半期のテーマは「Chat GPTの利活用」で、私とデータソリューション部のMLエンジニアが共同講師をして、OpenAIのAPIを活用するハンズオン等を実施

    • 7月以降の勉強会からエンジニア文化委員会主催で開催するようになった

    • 7-9月の四半期のテーマは障害対応で、SREと情報セキュリティの関係者が共同講師をして、障害対応マニュアルの確認を通した障害対応フローの確認やポストモーテムの読み合わせや、グループに分かれてGameDayのような形でインシデント調査をするケーススタディを実施

  • 技術強化委員会(10月〜)

    • ここ数年で多くの異なるバックグラウンドのエンジニアがジョインしたこともあり、メンバ間のテクニカルスキルに一定以上のばらつきが出てきたという課題を解決するための委員会(関連記事

    • メンバは委員会リードの木南さんに加え、各事業部や横串部門から技術スキルや発信力を踏まえて委員を招集して構成

    • まずはエンジニア組織全体の技術の底上げに取り組んでいく

  • エンジニア合宿「Eng Camp 2023」(11月)

    • 毎年恒例で実施している合宿を今年も開催(関連記事

    • エンジニア文化委員会のアクションプランであるクロストークモブプログラミングといったトピックを組み込み、いずれも参加者からとても好評だった

      • オフラインで集まってトピックを設定したライブ感のあるクロストークがなされ、他の部門や他の技術領域のエンジニアが日頃考えている事などの相互理解が深まった

      • グループワークではモブプログラミングによる課題解決に取り組んでもらい、グループのメンバ同志のコミュニケーションが十分にできた

  • エンジニア社内インターンチャレンジ制度(6月〜)

    • 中長期的視点でエンジニアのスキルアップを支援する制度として、HRのリード・アドバイスをいただきながら6月に導入(HRの皆さん、お力添えありがとうございました)

    • 各事業部で案件を提示し、希望者がいれば案件の所管部門の関係者と面談し、スキルや従事割合など大きな問題がなければ兼務で取り組むというもの

    • 今年はオンライン医療事業部の笠井さんがデータ基盤整備のインターン(8月〜10月)にチャレンジ

  • ボトムアップの活動 - Tech Huddle

    • MICINのボトムアップ活動の代表例である毎月開催のLTゆる会関連記事)はすでに文化として浸透している

    • これに加えて、LTゆる会以上のゆるさで、完全に有志のみでトピックを持ち寄って意見交換をするTech Huddleの取り組みも始まり、12月上旬に初回が開催

    • これも来年にかけてエンジニア組織に文化として浸透していくか、今からとても楽しみ

  • 生成AIを活用した業務生産性の改善

    • MICINでもGitHub Copilotをアプリケーションエンジニア全員に導入

    • 11月のEng Camp 2023のグループワークで、普通にやると大量のコピペ手作業が必要なところをGitHub Copilotが自動補完機能がそのコピペ作業を見事に代替してくれて感動した

2024年に向けて

これまでに書いてきたような素晴らしい実績や取り組みがなされている一方で、今後、MICINのビジョンやミッションを実現できる最高のプロダクトになるまでにはまだ多くのギャップがあると考えています。例としては、保険事業も含めた複数のサービスやプロダクト間のシナジーをさらに高める、MICINのミッションにもあるような健康医療データを利活用を進めてそれをベースに生成AI等のトレンドとなる技術を積極的に取り入れる、といったことが挙げられます。こうしたことをしっかり1つ1つクリアしていくことで、MICINのユーザーに提供する医療体験の質を飛躍的に高められ、ビジョンやミッションの実現にグッと近づくことができると信じています。

2024年は、上記に書いたような最高のプロダクトに最速で近づいていくために、2023年に取り組んだ施策をしっかりと継続してエンジニア組織のベースとなる部分を確立することに加えて、品質管理も含めた開発生産性を最適化して検証スピードを高めることや、技術広報の強化等の施策でエンジニアのエンゲージメントをさらに高めていくといったことに取り組んでいきたいと考えています。

最後に

このMICIN Advent Calenderは昨年から取り組みが始まりましたが、昨年は運営リードの阿部さんが代表の原さんはじめPdMの皆さんにお願いしてなんとか25日が埋まったという状況でした(これはこれでバラエティのあるコンテンツになるという良い面はあると思います)。それに対し、2年目の今年は何と25日全てがエンジニア職種の投稿で埋まりました!日々の開発や運用等の業務で多忙を極める中、本企画に投稿していただいたエンジニアの皆さんをはじめ、昨年と同様に運営面で大車輪の動きをしていただいた阿部さん、そして、Advent Calenderを会社の発信施策として位置付けていただき、会社の公式のNoteやX(旧Twitter)での日々の発信、記事のバナー作成といった運営に多大なご協力をいただいたHR、広報、デザイナーの皆さん、本当にありがとうございました!

皆さま、メリークリスマス!今年も大変お世話になりました。良いお年をお迎えください。

2024年もMICINはより多くの方により良いサービスを提供すべく、全力で邁進していきます!


MICIN ではメンバーを大募集しています。
「とりあえず話を聞いてみたい」でも大歓迎ですので、お気軽にご応募ください!

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!